手描友禅染工程
1 下絵
白生地を裁断し、先ず仮絵羽(かりえば–注1)します。そこに紫露草の花弁から抽出した藍花(あいばな–注2)で、生地に直接図柄を骨描きします。
2 糸目糊置き
下絵の通りに、糯粉から作った糸目糊を細く線状に置いてゆきます。このため、糸目友禅という名称がつけられました。糸目とは、糸のように細いという意味です。
3 地入れ
糸目を置き終わった布を、柱と柱の間に長く張り、うすく布糊を溶いた液を大刷毛で満遍なく引いてゆきます。糊を布に定着させます。
4 豆地入れ(ごじいれ)
乾いた布の模様の部分に、更に大豆の豆汁を筆で丁寧に挿し込みます泣き(染め出し)を防止します。
5 色挿し
生地を伸子(しんし–注3)に張り、横張り(よこばり–注4)を掛けて平らにし、溶いた染料の色を、模様の中に筆又は刷毛で染め込んでゆきます。
6 空蒸し
色を挿し終わった布を、蒸気釜で約一時間程、蒸します。これで色素が布にほぼ定着します。
7 伏せ糊
蒸しあがった模様の部分を、糸目糊と同様の「伏せ糊」で満遍なく覆います。
8 染め地入れ
地入れに同じ。糊を定着させます。
9 地染め
地入れ同様布を張り、大刷毛で地色を全面に施します。
10 本蒸し
空蒸し同様、釜で一時間蒸します。全体の色が定着します。
11 水元(みずもと)
所謂、友禅流し。昭和初期までは川で行われていましたが、現在では小型のプールに水を張り、水洗いしています。
12 仕上げ
染め上がった作品に、線描き、金箔押し、金泥描き、金線置き等々、上仕上げを施します。
13 湯のし
染めの加工上で縮んだ布地を、蒸気で均一に巾出しします。
14 染み抜き
加工途上でのあらゆるシミを取り除きます。
15 刺繍
豪華さを加えるため、和刺繍を施します。
16 仕立て
注文誂えに添って本仕立てし、一昼夜寝押しをして本だたみ、箱に収めて製品となります。
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注1 仮絵羽 かりえば
仕立て寸法に合わせ、模様を合わせるために、生地を裁断し、仮に着物の形に縫い合わせる事。
注2 藍花 あいばな
紫露草の花弁から抽出した液体を、和紙に染み込ませたもの。水に散りやすく、下絵を描くのに適している。
注3 伸子 しんし
染めやすいように、生地を張るための道具。竹製の棒状で、両先に針がついている。X(エックス)状に掛けて、布を張り込む。
注4 横張り よこばり
伸子を張った生地に、横がけに止めてゆく、両先に針のついた竹の細棒。